13 December, 2017

鍋を囲んで

"NABE"Japanese winter pot cooking


 葱、とくれば鴨。カモネギ。鍋に鴨肉の脂身を入れて火にかけると、ジュワッとした旨味が溢れ出す。そこへ香ばしく焼き目をつけた長葱を入れて鴨の脂と絡め炒める。葱に火が入った頃に鶏がらスープを加えて、鴨肉をしゃぶしゃぶしながらいただく。味付けはひとつまみの塩で十分。香ばしく甘い長葱と、シャキシャキと新鮮な白菜、畑の冬の野菜が鍋の中。シンプルであればあるほど食材の味が前へ出る。旨味や滋味がスープに流れ出て、渾然となったそれらを絡めながら、〆には茹でた蕎麦を入れてスープまで全部いただく。うまい。


Grilled japanese leeks in NABE


Duck meat and Japanese leeks pot cook

Soba to eat at the end



 畑の野菜を育てている仲間で、美味しい鍋と、美味しいお酒と、それを囲む時間、会話。畑が繋いでくれる恵にあらためて感謝する時間。それにしても、鍋ってやっぱりいいよね。美味しい。


Japanese radish under the blue sky


 冬晴れでこの冬一番の冷え込みの東京、畑の大根は青空の下、土の上へと伸びてゆく。間引き忘れた大根がかえって大きくなりすぎず、使いやすい大きさに。鴨鍋に入れても絶対美味しかったなぁ、と思いかえしながら、次はこの大根でみぞれ鍋かな。

  畑の収穫は年明けまでもう少し続きます。








 鍋の前の日はイタリア料理研究家 貝谷郁子先生のところへ。

Sapore di olio d'oliva


Secchio e olio d'oliva appena spremuto


 空輸で届いたばかりの搾りたてオリーブオイルをいただきにうかがい、数種類のオイルを少しづつティステイングさせていただいた。
 オリーブは9月から11月くらいの間に収穫、搾油される。イタリアから輸入されるオリーブオイルの大半は搾油後、静置され実の澱などを沈め、透き通った上澄みの部分のみをボトリングして、船便で半年ほどかけて日本へやってくる。今回は静置せず、搾りたてのままボトリングしたものを航空便で送ってきた、いわばボジョレーヌーボのようなオイル。日本酒でいえば無濾過原酒だ(濾過はしているけど)。
 ティスティングしてみても、違いのわかるような舌は残念ながらぼくは持っていないと思っていたのだけど、バケットにつけてみると香りからしてまったく違う。びっくりしたのはピリッとした刺激。とろみのある油の甘みを予想していたので、スパイスが入っているような刺激が舌先に感じられたオイルにはびっくりした。ほかにも果実のような甘さがほんのり感じられるオイル、また野菜のような香りが感じられたもの、それぞれの違いの幅にも驚いた。この違いは品種、気候のほかに収穫時期が決め手になるらしく、若い緑の頃と、完熟した黒いものとではまったく違うものになるそうだ。若いオリーブからはトマトの青臭さにも似た若い野菜の香りと刺激とが、完熟オリーブからは熟れた果実のような甘みとコクが抽出されている。今回、購入したのはシチリアの農家のもの。トスカーナに比べて温暖で海風を受けて育つオリーブは、魚介によく合うような気がする。あくまでイメージだけどね。

 通常のオリーブオイルは化学処理によって分離、不純物を取り除いて精製された油に、こういった搾って濾過しただけのバージンオイルの風味をブレンドしたもの。日本ではピュアオイルなどと呼ばれている。普段、パスタなど炒め物などに使うオイルはピュアオイルでいいけれど、オリーブの実を絞って濾しただけのエクストラバージンオイルには特徴的な香りや風味が強く残っているので、調味料的に仕上げに使うととても美味しい。パスタの仕上げに回しかけたり、スープに数滴垂らすだけでグンっと旨味が増す。
 
 昨日はお醤油と合わせてお豆腐に。これがめちゃめちゃ美味しい。そういえば醤油とオリーブオイルの組み合わせはお刺身にも合うんだよね。バケットにさっとつけてシンプルに食材の味を楽しむのも、食材同士の旨味を合わせて複雑な味を楽しむのも料理の楽しみ、食べることの楽しみ。
 鍋も搾りたてオリーブオイルも、この季節だからこその楽しみ。新そばもいただいたし、冬の魚もたくさん出てきたし、新酒の便りもぞくそくと...冬の楽しみ、まだまだたくさんいただきましょう。



ごちそうさまでした〜。
 
Caffè latte

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